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2016年度展示情報一覧
愛された作家夏目漱石 ‐文豪、現代作家たちが愛した漱石とその作品‐

愛された作家夏目漱石 ‐文豪、現代作家たちが愛した漱石とその作品‐

最終更新日 2017年05月25日

展示期間 : 01月から02月

展示場所 : 本館一般展示


展示ポスター
明治の文豪、夏目漱石。『吾輩は猫である』『坊ちゃん』『こゝろ』…。没後100年を経てもなお、多くの人に作品を読まれ続けている、人気作家です。
漱石の作品を愛したのは、私たち読者だけではありません。寺田寅彦、芥川龍之介、久米正雄…作家、俳人、学者など、多彩な友人や門下生たちが漱石の作品を愛し、彼を慕いました。また現代でも、多くの作家が漱石に関するエッセイやオマージュ作品を書いています。
今回の展示では、漱石の作品はもちろん、漱石にまつわる評論やエッセイに加え、文豪や現代作家による漱石作品のオマージュなど、漱石を愛した作家たちによる作品も紹介します。

展示関連情報

漱石の作品

夏目漱石の小説の中から、代表的な作品を紹介します。

『吾輩は猫である』

夏目漱石/著
漱石の処女作。
ある教師に拾われた捨て猫が、人間の家の中でおこる日常の出来事を、淡々と、時にシニカルに語ります。猫には理解できない人間の言動や行動の描写がユーモラスで、笑いを誘う作品です。

『坊っちゃん』

夏目漱石/著
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」。やってみろと囃されれば2階から飛び降り、時には自分の指さえ切ろうとしてみせる。
そんな素直で無鉄砲な「坊っちゃん」が、教師として松山の学校へ赴任し、個性的な同僚や生徒たちを相手に過ごす日々を描きます。テンポの良い文章で読みやすいので、漱石作品の初心者におすすめです。

『三四郎』

夏目漱石/著
東京の大学に入学し、上京した三四郎。汽車で出会い、名古屋で同宿した謎の女。大学の池の端で出会った美禰子への憧憬、そして失恋。
世間知らずで自惚れ屋の三四郎が、美禰子や野々宮、与次郎、広田先生、よし子たちに翻弄されながらも、東京で成長していく様を描いた青春小説です。
『それから』『門』へと続く、前期3部作の1作目です。

『それから』

夏目漱石/著
代助は30歳にもなるのに定職にも就かず、また嫁ももらわずにいた。親や兄嫁から勧められる縁談を断り続けるのは、かつて愛していながらも友人に譲った三千代を忘れられないためだった。
再会した友人の妻と心を通わせる背徳の愛を描いた、近代の自由恋愛の問題に切り込んだ作品です。

『門』

夏目漱石/著
宗助とお米は、世間との交渉をほとんど持たず、ひっそりと生活していた。それは2人が暗い過去を抱えているためだった。
不義理を押し通し、結ばれた男女の姿と、僅かにかみ合わない心の様子を描いた作品です。

『彼岸過迄』

夏目漱石/著
大学卒業後も職に就かずにフラフラしていた敬太郎は、ある日、友達・須永の叔父に、ある男の尾行を頼まれる。それをきっかけに、敬太郎は須永や、彼の周りの人たちのことを知っていくことに…。
須永といとこの千代子のつかず離れずの恋を中心に、恋心や嫉妬心など、登場人物1人1人の複雑な境遇や心の葛藤を丁寧に描いた作品です。
『行人』『こゝろ』へと続く、後期3部作の1作目です。

『行人』

夏目漱石/著
放蕩者の二郎はある時、気難しい兄から「妻の貞操を試すために、共に一晩を過ごしてほしい」と頼まれる。二郎は戸惑いながらも、兄嫁と共に夜を過ごすことになるが…。
信じたいが信じられず、信じてもらいたいのに信じてもらえない。時に病的なまでに揺れる、人物の心模様が描写されます。

『こゝろ』

夏目漱石/著
「自己の心を捕へんと欲する人々に、人間の心を捕へ得たる此作物を奨む。」これは『こゝろ』連載前の広告文として漱石が書き、1914(大正3)年9月26日に掲載されたものです。人が他人の過去を捉えようとするとき、そこにあるのは1人だけの過去ではないかもしれません。先生、K、静(お嬢さん)、奥さん、そして「私」。幾重にも複雑に絡まりあう心の機微が余すことなく描かれています。

『明暗』

夏目漱石/著
漱石、未完の遺作。
新婚の津田とお延は一見、幸せな夫婦に見えた。しかし、津田は結婚を間近にし捨てられた清子を忘れられずにいる。津田は自分の病気を機に、けしかけられるようにして、清子が1人でいる湯治場へと向かった。
昔の恋人が忘れられない男。夫の秘密に気づきながらも愛されたい女。恋人を捨て別の男と結婚した女。男女のエゴイズムを様々な角度から描いた作品です。

『漱石全集』

夏目漱石/著 岩波書店
漱石の小説だけでなく、評論・俳句・日記・書簡など、幅広い資料を収録した全集。当初は、漱石の門下生たちによって編集され、作品解説も書かれました。自筆原稿を底本にした全集で、漱石研究には欠かせない必読書です。

漱石研究・評論

漱石の作品を研究した本や、漱石に関する評論などを紹介します。

『夏目漱石論』

蓮實重彦/著 青土社 1987年
「<漱石を読む>とはいかなることか?」一般にイメージされる漱石像を「人影」と称し、神話的ともいえる漱石像からの脱却が試みられています。
作家から小説を切り離すことによって明らかになる漱石とは?小説の中のある言葉に注目した作品論的作家論です。

『『こころ』大人になれなかった先生』

石原千秋/著 みすず書房 2005年
2005(平成17)年に岩波書店が行ったアンケートで1位となるなど、未だに人気が衰えることのない『こゝろ』。本書は、テクストとして『こゝろ』の「上」と「下」の一部が掲載されているため、原文を読んでからすぐに本文を読むことができます。
授業形式で進む、語りかけるような文章は論文初心者でも読みやすいです。「小説を読み解き、研究するとはどういうことなのか。」その手がかりを教えてくれる1冊です。

『なぜ『三四郎』は悲恋に終わるのか』

石原千秋/著 集英社 2015年
「夏目漱石は悲恋小説家?」「森鴎外の『雁』は読者の失恋?」
近代文学に意外と多い恋愛というテーマの中でも「悲恋」に注目しつつ、近代文学と切り離すことのできない「個人」というテーマにも言及した研究書です。
漱石の『三四郎』を始めとする、10作品の悲恋を巡る物語を「誤配」という概念で読み解くことが試みられています。

『夏目漱石 『明暗』まで』

内田道雄/著 おうふう 1998年
『我輩は猫である』から『明暗』に至るまでの漱石の道程を明らかにするべく、構成された漱石論集。『明暗』の論考では、新聞小説ならではの挿画が考察の対象とされています。当時、掲載された挿画が引用されているので、絵で表現された漱石小説の一面を見ることができます。

『漱石のマドンナ』

河内一郎/著 朝日新聞出版 2009年
夏目漱石はなぜ三角関係を書き続けたのか?謎につつまれた伊香保温泉での恋について、具体的な状況証拠だけにしぼって、漱石の行動と感情が推察されています。
また、漱石が惹かれた女性たちにも言及し、漱石の恋愛体験の再現が試みられています。

『愛の不等辺三角形』

吉村英夫/著 大月書店 2016年
漱石作品に欠かせない要素である三角関係。
「三ノ人物ヲ取ツテ相互ノ関係ヲ写ストキ・・・無限ノ波乱ヲ生ズ」というメモと三角関係の手書きの図を漱石は残しています。本書ではこのメモと図式を読み解くことを目的としています。不安定な愛の三角関係を明らかにすることを追及した1冊です。

『日本人が知らない夏目漱石』

ダミアン・フラナガン/著 世界思想社 2003年
漱石は日本人の中では「文豪」として確固たる地位を確立していますが、西洋人にとってはその限りではないようです。西洋人によるこれまでの漱石研究に批判的な視線を向け、漱石こそ「小説の王様」だとする著者が、『門』を中心として漱石作品と西洋文学・絵画の関係について考察しています。

『漱石とホームズのロンドン 文豪と名探偵百年の物語』

多胡吉郎/著 現代書館 2016年
まだ英語教師だったころ、漱石はイギリスへ留学しています。それはまさに、ロンドンでシャーロック・ホームズが活躍している時代でした。漱石の下宿先やその生活を考察することで、当時、世界の最先端にあったロンドンの再現が試みられています。架空の人物と実在の人物の接点の検証に挑んだ1冊です。

『七つの顔の漱石』

出久根達郎/著 晶文社 2013年
漱石ファンの作家、出久根達郎による、漱石にまつわるエッセイ集。
作家、教師の他にも、漱石には装丁家やスポーツマンという意外な7つの顔があった?漱石夫妻の手紙の筆跡はそっくり?出久根達郎の、新説・漱石論が満載です。

『夏目漱石 百年後に逢いましょう』

奥泉光/責任編集 河出書房新社 2016年
没後100年の節目に出版された、漱石の特集本。奥泉光・水村美苗・北村薫など、漱石ファンを公言する様々な作家による、エッセイや対談などが収録されています。
また、付録の「百年後の夏目先生カレンダー」では、100年前の漱石の毎日を追体験できます。

漱石の思い出

家族、友人、門下生など、漱石を囲む人々の視点から、漱石について書かれた本を紹介します。

『漱石の思い出』

夏目鏡子/著 文芸春秋 1994年
妻、鏡子が語った「漱石の思い出」。家庭での漱石の様子や、彼の友人関係などがわかる貴重な資料でありながら、たわいもない日常が綴られたエッセイでもあります。
健やかなる時も、病める時も、共に時を過ごした夫婦の記録です。

『猫の墓 父・漱石の思い出』

夏目伸六/著 河出書房新社 1984年
胃が弱いのに、子どもにお菓子の場所をこっそり聞いて、食べていた父。世間では悪妻と呼ばれているが、実際は夫の癇癪を受け止め、子どもたちをおおらかに分け隔てなく愛していた母。夏目家の次男が、家族の思い出を懐かしく振り返った1冊です。

『夏目家の糠みそ』

半藤末利子/著 PHP研究所 2000年
漱石の長女・筆子と作家・松岡譲の娘、半藤末利子のエッセイ。
漱石の弟子だった父と母が結婚した経緯、孫として漱石ゆかりの地を訪れたゆかいな経験など、孫だからこそ語れる楽しい秘話が満載です。

『漱石と十弟子』

津田青楓/著 芸艸堂 2015年
漱石を慕い、漱石山房に出入りしていた画家の津田青楓。本書は青楓と同様に漱石のもとに集まっていた若者たちと、漱石との交流の様子を綴った雑記です。作品について、芸術について、女性について・・・。若い彼らと漱石との忌憚のないやりとりが楽しい1冊です。

『漱石先生からの手紙 寅彦・豊隆・三重吉』

小山文雄/著 岩波書店 2006年
「先生様はよそうじゃありませんか、もう少しぞんざいに手紙を御書きなさい。」「うちへ来る人は皆恐ろしい人じゃない。君の方でだまってるから口を利かないのだ。」
漱石の弟子と言われる、寺田寅彦・小宮豊隆・鈴木三重吉の3人。彼ら弟子に宛てた漱石の手紙から、「漱石先生」の優しさを感じることができる1冊です。

『先生と僕』

香日ゆら/著 メディアファクトリー 2010年
漱石のことが好きすぎて、「自分の全集も漱石と同じ出版社から出して欲しい」と遺書に書いた、芥川龍之介。漱石作品の登場人物のように見られることに困っていた、寺田寅彦。
漱石と、彼を囲んだ友人・門下生たちとのエピソードを、4コママンガで楽しむことができます。

『ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石』

伊集院静/著 講談社 2013年
松山の田舎出身で、おおらかな人柄で人を惹きつけた、正岡子規。東京育ちの秀才で、クールでとっつきにくい印象のあった、夏目漱石。
タイプの違う2人の若者が出会い、お互いの才能を認めて生涯の友となっていく、友情の物語です。

漱石作品のオマージュ

多くの作家たちが、漱石の小説に影響を受けて作品を執筆しています。漱石小説のオマージュ作品を紹介します。

『吾輩は猫である』のオマージュ

『贋作 吾輩は猫である』

内田百間/著 六興出版 1981年 ※百間の「間」は正しくは門構えに月
『吾輩は猫である』の最後で、酒に酔って水がめに落ちてしまった名もなき猫、「吾輩」は、酔いがさめたら水がめから這い上がって新たな夫婦に拾われる。今度の主人には名前をもらい、奥さんには器量よしと褒められて・・・。
「吾輩」の第2の人生を描いた作品です。

『『吾輩は猫である』殺人事件』

奥泉光/著 新潮社 1996年
「吾輩」が、海を渡った上海で名探偵に!?イギリス猫のホームズやワトソンといった個性的な猫たちと共に、密室殺人を捜査し、推理し、冒険します。
ミステリ版の『吾輩は猫である』です。

『坊ちゃん』のオマージュ

『うらなり』

小林信彦/著 文藝春秋 2006年
『坊ちゃん』に登場するマドンナの恋人、「うらなり」。
教頭の策略で九州に飛ばされた彼が、30年後に東京で数学教師の山嵐と再会し・・・。
うらなりの視点から語られる『坊ちゃん』と、その後の物語です。

『夢十夜』のオマージュ

『夢一夜・火星人記録』

北杜夫/著 新潮社 1989年
妖しく、時に不気味だけれど、美しい。幻想的な10の夢を書いた、漱石の『夢十夜』。
この名作の雰囲気を、「どくとるマンボウ」シリーズの北杜夫がショートショートで再現しました。
オマージュ作『夢一夜』を含む、北杜夫の短編小説集です。

『新・夢十夜』

芦原すなお/著 実業之日本社 1999年
浮気を繰り返すぼく。階段から落ちて倒れた妻。眠る妻の顔を見ていたら、「妻はわたしの夫だった」ことを思い出し・・・。
夢か現実か。過去と現在や人と人との境目があいまいな、不思議な10の物語です。

『こゝろ』のオマージュ

『心』

姜尚中/著 集英社 2013年
「わたし」はある日、自著のサイン会で、自分のファンだという1人の青年に手紙をもらう。手紙には亡くなった彼の親友について、書かれていて…。
親友の死。青年と親友との女性を巡る三角関係。東日本大震災後による心の傷。青年と便りを交わす中で、「わたし」は「生きる」ということを見つめなおしていきます。

『話虫干』

小路幸也/著 筑摩書房 2012年
物語の中に入り込んで話の内容を勝手に変えてしまう、「話虫」。馬場横町市立図書館に就職した糸井馨の仕事は、話虫によって無茶苦茶にされた、漱石の『こゝろ』の世界を元に戻すことだった。
糸井は無事に、『こゝろ』の世界をもとに戻すことができるのでしょうか。

『明暗』のオマージュ

『続明暗』

水村美苗/著 筑摩書房 1990年
津田が湯治場で清子と面談したところで絶筆となり、清子がなぜ突如として津田を捨て、関と結婚したのかは明かされないままとなった…。
漱石の文体をそのまま再現し、未完となった『明暗』の完結に挑戦した力作です。

漱石関連ホームページ

夏目漱石に関する情報を知ることができる、ホームページを紹介します。

新宿区立漱石山房記念館別ウインドウで表示する

2017(平成29)年9月開館予定の、漱石にとって初となる本格的な記念施設です。
漱石が生まれ育ち、その生涯を閉じた新宿区に、数々の名作が生まれた「漱石山房」の一部が再現されます。
ホームページでは、「漱石山房」周辺マップや、漱石をとりまく人々などの情報が公開されています。

Web版夏目漱石デジタル文学館(県立神奈川近代文学館)別ウインドウで表示する

県立神奈川近代文学館では、所蔵している夏目漱石関連資料をデジタル化し、インターネット上で公開しています。
「「漱石山房」を見る」というページでは、「漱石山房」の実際の室内の写真を見ることができます。

夏目漱石「吾輩は猫である」(朝日新聞デジタル)別ウインドウで表示する

漱石は、1907(明治40)年、40歳の時に教職を辞して朝日新聞社に入社し、専業作家生活に入りました。
2016(平成28)年、朝日新聞では漱石の没後100年を機として、『我輩は猫である』をはじめとした漱石の代表作を連載しました。特集ページでは、連載作品の紹介や、漱石にまつわる記事の紹介、漱石のゆかりの地などを見ることができます。

鈴木三重吉(成田ゆかりの人物 成田市立図書館デジタル資料)別ウインドウで表示する

1908(明治41)年10月から1911(明治44)年4月まで、成田中学校(現成田高校)で教鞭を振るっていた、童話作家の鈴木三重吉。彼は漱石に師事し、漱石の推薦を得て作家としての道を歩み始めました。
成田市立図書館では漱石と三重吉の書簡をはじめ、成田時代に関わる三重吉の自筆原稿などもデジタル資料として公開しています。