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貧困化社会を考える

貧困化社会を考える

最終更新日 2012年10月30日
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展示期間 : 9月から10月

展示場所 : 本館エントランス

貧困化社会を考える

 失われた10年といわれる長い不況から抜け出すために、日本政府は構造改革を推し進め、結果としていざなぎ景気以来の長期好景気を迎えました。

 しかし、その一方、日本は「総中流社会」から勝ち組負け組がはっきりする「格差社会」になったと言われるようになりました。(2006年に『格差社会』として取り上げました。)
 

それが世界金融危機に始まった景気後退により、派遣切りに始まる「雇用の不安定さ」や、学校に行きたくても親の収入の問題で行けないといような「貧困の世代間連鎖」もクローズアップされてきました。

 今回の特集では、貧困をテーマにした資料だけではなく、貧困を生み出してきた4つの要因(長期不況、非正規雇用、日本政府の政策、家族構成の変化)に関する資料もご案内します。併せて、貧困問題を考えるためのパスファインダー(調べ方案内)もご用意しました。


貧困問題を考えるパスファインダー【サイズ:249キロバイト】 PDF

展示関連情報

貧困

貧困をテーマとした著作

『格差と貧困がわかる20講』

牧野富夫/編著 村上英吾/編著 明石書店 2008年
 本書では、この5年程の間に企業収益は2倍近くに、役員報酬は3倍近くになったのに対して、労働者の所得は4%ほど下がり、富と貧困の二極化が鮮明になってきていると分析しています。
 日本大学経済学部の総合講座「格差社会」の講義内容をもとに編纂したもので、各講を研究者や、ジャーナリスト、医師、市民活動家が受け持っています。

『生きさせろ!、難民化する若者たち』 

雨宮処凛/著 太田出版 2007年
 自己責任の名のもとに、不安定で将来を描けない労働を強いられている人たちへのインタビューや、フリーター労組の団体交渉の場に参加した様子など、抵抗する側の様子が描かれています。いまや日本で働く人の3人に1人が非正規雇用で、24歳以下では2人で1人という状況に対して、著者は怒りと若者たちへの共感を持って「反撃を開始する」と述べています。

『貧困の概念』

ポール・スピッカー/著 生活書院 2008年
貧困とは何か。先進国の貧困と途上国の貧困とを分けずに国際社会における貧困を主題として、貧困の定義や、貧困の測定などの問題から、物質的状態、経済的境遇、社会的地位(社会関係)、道徳的次元を含んだ多面的な顔をもつ貧困への包括的な理解を目指そうとしています。
著者は社会政策研究者であり、英国ロバート・ゴードン大学公共政策学部の学部長です。
「貧困」について学び、考えるための文献ガイド(日本語限定)が付いています。

長期不況

長期不況(経済問題に関する資料)

『資本主義はなぜ自壊したのか』

中谷巌/著 集英社インターナショナル 2008年
「改革なくして成長なし」というスローガンとともに進められた構造改革の一翼を担った著者は、日本経済の活力を奪いつつあった既得権益構造の打破など構造改革については一定の意義があったと評価はしています。
しかし、「新自由主義」思想が、格差社会を急速に拡大させ、福祉を切り捨て、地方経済を崩壊させるなど、日本社会から安心・安全を失わせてしまったと懺悔し、新自由主義やグローバル資本主義の欠点を是正する方策の方向性について提言しています。

『資本主義の暴走をいかに抑えるか』

柴田徳太郎/著 筑摩書房 2009年
小泉政権発足後、「官から民へ」が国是となりました。しかし世界金融危機が起こったように、「市場に任せる」改革は問題を起こしつつあります。しかし、 「官僚主導の規制」という対立軸はもう有効性を失っているとし、市場主義的な改革をいかに評価し、問題点はどこであり、代替的な改革案は何かということに ついて、「市場対国家」「市場対規制」という従来の視点ではなく、「市場と制度」「市場と組織」という構図から論じています。

『分断される経済、バブルと不況が共存する時代』

松原隆一郎/著 日本放送出版協会 2005年
2005年体制の「構造改革」は何をもたらしたか。
構造改革が、日本経済の構造にどういう変化を与えたかを分析し、続いて、公的部門の改革=郵政民営化、年金改革、財政改革がもたらすものを挙げています。
そして、「市場の純粋化」による「都市機能の再生」が地域社会をどう分断していったかを取り上げ、同様に企業と学校の組織をどう変えていったかを指摘しています。
構造改革の問題点は「分断」をもたらすことであり、経済が社会や文化、歴史に密接につながっているという視点に立つ社会経済学の立場から真の経済回復に必要なものを提案しています。

非正規雇用

非正規雇用(雇用問題に関する資料)

『雇用融解』

風間直樹/著 東洋経済新報社 2007年
製造業復活の裏では、偽装請負が広がっていた・・・。
著者は東洋経済新報社の経済記者で、働くことは単なる経済的事象ではなく市井の人々の日々の営みそのものであると考え、労働の現場を取材しています。取 材対象は請負、外国人研修生、フリーター、パートタイマー、個人請負だけではなくホワイトカラー・エグゼンプションの対象となる「正社員」や「医師(勤務 医)」、「教員」の現実も拾い上げて、がんばる人も報われない「雇用融解」の現実が新しい「日本型雇用」なのかと問題提起しています。

『労働と貧困、拡大するワーキングプア』

日本弁護士連合会第51回人権擁護大会シンポジウム第3分科会実行委員会/編 あけび書房 2009年
本書は、日本弁護士連合会第51回人権擁護大会シンポジウムを基にまとめられたものです。実態分析の各種統計資料が充実しています。また、労働法制・社会保障制度の課題やアメリカ、韓国、スウェーデンなど諸外国のワーキングプア問題の法制度に関する資料もあります。

『なぜ雇用格差はなくならないのか』

小林良暢/著 日本経済新聞出版社 2009年
現在の雇用危機の問題点をセーフティネットなきリストラが進行している点であると分析し、格差社会の根源は「雇用格差」であり、その雇用格差の元は、派遣 や受負労働者、契約社員など非正規雇用が、正社員に対して雇用保障や、賃金の面で著しく劣っていることだと著者は主張しています。そのうえで、非正規雇用 「天下三分の計」を提案しています。それは、1/3は正社員化を図り、多様な働き方を自ら志向する1/3は正社員との均等待遇を図り、残りの1/3は社会 福祉や公的扶助でカバーするという考え方です。

『「使い捨てられる若者たち」は格差社会の象徴か』

原清治/著 ミネルヴァ書房 2009年
若年者の非正規労働者、いわゆるフリーターといっても、ひとくくりにできるものではなく、比較的環境に恵まれている学力上位層とあまり環境に恵まれていな い学力下位層に大きく分かれており、日本においては、欧米と異なり社会階層の上下に関わらず低賃金労働についている若者がいることが特徴と分析していま す。
著者は比較教育学の研究者で、日本は、学力や学歴の低い社会的に排除されやすい若者だけがフリーターになるのではないことを踏まえて、「使い捨てられる若者たち」を生みださない支援とは何かについて考察しています。

日本政府の政策

日本政府の政策(規制緩和・構造改革の評価に関する資料)

『「小さな政府」を問いなおす』

岩田規久男/著 筑摩書房 2006年
小泉政権は「小さな政府」へと改革を進めてきましたが、そもそも政府の大きさはどう測るのかという基本から、大きな政府へと進んで行った歴史的な経緯、す なわち、第1次石油ショック後にケインズ経済学の信頼性が低下して、自由主義・小さな政府という考え方が復活してきた流れを説明しています。
小泉改革の挫折をイギリスの経験を踏まえて、政府を小さくするだけでは雇用は増えず、機会の平等を保障する制度が必要であるとし、そのほか政策上の課題も述べています。

『派遣法改正で雇用を守る』

西谷敏/著 中野麻美/著 旬報社 2009年
労働者派遣法の制定の後、1999年に原則としてすべての業務で派遣が可能になりました。これにより、雇用の原則である「直接雇用」「期限なし」がどんど ん狭められてきていることから、派遣法の問題点および政府改正案の問題点を指摘し、NPO法人派遣労働ネットワークの提案する派遣法の抜本的改正案を載せ ています。また、巻末に派遣法を中心とした規制緩和政策の推移表もあります。

『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』

竹中平蔵/著 日本経済新聞社 2006年
本書は、小泉政権で大臣を歴任し、構造改革を推し進めた竹中氏の日誌を元にした記録です。金融改革と郵政民営化の大臣側から見た経緯と、小泉政権が総理主導の政策を進めていく手段として経済財政諮問会議を活用した流れを描いています。

家族構成の変化

家族構成の変化(高齢者・若者・母子家庭・障害者に関する資料)

『若者たち、夜間定時制高校から視えるニッポン』

瀬川正仁/著 バジリコ 2009年
夜間定時制高校の現実を描き出しているノンフィクションです。定時制高校に通う若者たちは、ヤンキー系、いじめにあった子、外国にルーツを持つ子、様々な障害がある子であり、あとは、戦中戦後のどさくさで学ぶことができなかった高齢者たちです。
事情がある子たちが通う夜間定時制高校を見つめることで、現代日本の矛盾が見えてきます。

『学歴分断社会』

吉川徹/著 筑摩書房 2009年
格差問題について、計量社会学の視点から描き出した本です。大学全入時代が到来すると言われていますが、「大卒(高校卒以上を指す)」は50%強からほぼ 水平に推移したままです。このことから、総中流社会といわれていた時代でも親を超えられない子世代はあったはずなのに,社会全体が豊かになっていく時代で あったため、社会階層が下がっても親世代よりは生活レベルは上がっていたため、それを実感しなくて済んでいたというのが現実だろうと分析しています。
学歴分断線を元にした調査から、非大卒者たちは、主体的に社会を動かしてはいないという「あきらめ感」が強いことなどを指摘し、戦後日本社会が「学歴」 によって分断され格差を生み出している社会だという現実を理解したうえで、18歳の進路がその後の人生に予想以上の影響を与えることを忘れてはならないと 指摘しています。

『子どもの貧困』

阿部彩/著 岩波書店 2008年
まず、貧困であることはなぜ問題であるのかを学力、健康、疎外感など各点から指摘し、また貧困というスタートラインでの「不利」が立ち消えることなく連鎖していくことから、子どもの貧困は、成長してからは解消できない「不利」であることを指摘しています。
国際比較での日本の子どもの貧困率は、貧困大国アメリカに近いくらい高いと分析しています。
また、日本の防貧対策(給付と負担)について、国際的な比較と共に、機能していないどころか「逆機能」して、貧困を悪化させている現実を指摘しています。
著者は、少子化対策でも母子世帯対策でもなく、その子どもが属する世帯のタイプに関係なく子どもの貧困の撲滅と適切なケアのために「子ども対策」が必要 であると訴えています。そして、貧困は自己責任に帰するのではなく社会全体でなくしていく必要があると問題提起しています。

『死にたくない!、いま、生活保護が生きるとき』

竹下義樹/編著 青木書店 2006年
財政再建のために生活保護費を削減したり、母子加算や保護基準を切り下げたり、「水際作戦」をしていたりと、生活保護は使いにくい制度となっています。
生活保護を出番のときにふさわしく機能させることが必要であるとして、生活保護「適正化」問題や、主要な生活保護裁判の争点の整理、政策動向をまとめて います。生活保護早わかりとして、「生活保護を利用するには?」という資料もあります。編者の竹下氏は弁護士で生活保護関係の著作があります。

『問題てんこもり!障害者自立支援法』

DPI日本会議/著 解放出版社 2007年
障害者自立支援法は、2005(平成17)年に可決、翌年施行されました。
この支援法は第1条の目的にある「障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した生活」の「能力及び適性」という文言が、障害者の生活を制 限することを正当化しかねない点で問題であり、また、応益負担の仕組みが、ただでさえ困難な自立を更に阻害していると述べています。資料として自立支援法 の問題点論点整理表が付いています。
著者のDPI(Diable Peoples' international)とは、国際障害者年(1981)に障害当事者団体として発足し、ノーマライゼーション社会実現のため、人権としての障害者問題に取り組んでいる団体です。

これから社会に出ていく若い方へ

これから社会に出ていく若い方へ

『どんとこい、貧困!』

湯浅誠/著 理論社 2009年
貧困問題を考えるときに必ず出てくるのは、「自己責任論」です。著者は、この自己責任論のわなについて、普通考えがちな「努力しないのが悪いんじゃな い?」「自分だけラクして得してずるいんじゃないの?」等の考え方を取り上げ、「溜め(ため)」という言葉をキーワードに、外からのトラブルに対して身を 守ってくれるお金や人間関係がまったくない状態の人まで一律に「自己責任だから」と潰していく社会が良い社会なのかと問いかけています。
著者は、自立支援センターもやいを中心に活動しています。

『軋む社会、教育・仕事・若者の現在』

本田由紀/著 双風舎 2008年
社会教育学を専門とする著者は、教育を終えれば、すぐに安定した仕事に就くことができ、順調に上昇する収入に基づき家族を作り、子どもの教育に費用や意欲 をつぎ込むという循環が、90年代半ば以降うまく回らなくなり、日本では子どもや若者への福祉が手薄なためその「軋み」が大きく出ていると述べています。
仕事で自己実現することを礼賛する風潮がありますが、働きすぎ、過労、バーンアウトの危険性をはらんでいることや、「学歴」が人々の一生を左右する社会である点、「家庭の教育力」向上政策の問題点など、現在の日本の若者を取り巻く環境を論考しています。

『格差社会とたたかう、<努力・チャンス・自立>論批判』

後藤道夫/著 青木書店 2007年
格差社会とは、貧困とくにワーキング・プア世帯の急増であることを政府統計から明らかにしています。また、格差拡大を容認する場合によく使われる「努力す れば報われる」「機会の平等」という条件があれば結果は不平等でも構わないという考え方や、「自立支援」が自立困難者を切り捨てる政策であることを批判 し、格差拡大を止め、貧困をなくすための課題と方策を提案しています。

統計情報

統計情報(日本で所得を計測する4つの代表的調査)

1.「所得再分配調査」別ウインドウで表示する

厚生労働省
日本人全員が対象の調査で3年ごとに実施しています。国民生活基礎調査のうち所得・税・社会保障に関する情報を詳しく調査したものです。

2.「家計調査」別ウインドウで表示する

総務省
一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9千世帯を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査しています。所得に加え消費の実態も含まれています。

3.「平成21年全国消費実態調査」別ウインドウで表示する

総務省
世帯を対象として、家計の収入・支出及び貯蓄・負債、耐久消費財、住宅・宅地などの家計資産を5年ごとに総合的に調査しています。所得に加え消費の実態も含まれています。

4.「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」別ウインドウで表示する

厚生労働省
主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数及び経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(一部は前年1年間)の状況を調査しています。最低賃金が分かります。

WEB情報源

WEB情報源

OECD東京センター別ウインドウで表示する

OECD東京‐主要統計:18.貧困、格差統計に、貧困率、子供の貧困率、ジニ係数があります。
日本と他のOECD諸国との比較には、「医師数」「総医療費」「自殺者数」「相対的貧困率」「パートタイム労働者(全労働者に占める割合)」があります。
統計は、一部は英語です。

特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい別ウインドウで表示する

ホームレス状態の方のアパートでの入居支援を通して社会的な孤立状態の解消をめざすNPOです。

反貧困ネットワーク別ウインドウで表示する

貧困問題に取り組む市民団体、労働組合、法律家、学者諸個人のネットワークです。

全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)別ウインドウで表示する

労働相談を軸に、「誰でもひとりでも入れる労働組合」として活動しており、正社員、パート、派遣など、雇用形態の如何を問わず、「あらゆる働き方の労働者に権利を」と訴え続けています。